逆三角形の男らしい体型を作るには、広くて厚い背中が欠かせません。その背中を鍛える最強の自重トレーニングが「チンニング(懸垂)」です。ジムに行かなくても鉄棒や懸垂バーさえあれば始められ、正しく行えば広背筋を中心に背中全体へ強烈な刺激を与えられます。
この記事では、ラットプルダウンとの違い、チンニングを背中に効かせるための正しいフォーム、グリップや脚の位置など、見落としがちなポイントを解説します。
チンニングとラットプルダウンの違いは「固定されるのはどちらか」
ジムでよく見かける「ラットプルダウン」と「チンニング」は、どちらも広背筋を鍛えるメジャー種目です。最も大きな違いはどちらが固定されているかという点です。
ラットプルダウン:足底、シート、脚パッドなど多くの固定面で身体を支え、バーを引き下げる
メリット
- ウェイトで負荷調整が可能
- 固定面が多くフォームが安定しやすく、初心者でも取り組みやすい
- 筋力が弱くてもトレーニングができる
デメリット
- 可動域が制限されやすく、体幹の関与が少ない
- 実践的な「引く力」につながりにくい
チンニング:バーは固定され、自分の身体を引き上げる
チンニングは自分の体重を支えながら引き上げる動作のため、より多くの筋肉を使います。特に、背中・腕・体幹が連動して鍛えられるのが大きな特徴です。
メリット
- 固定面が少ないため、体幹や補助筋を含む全身の筋肉の動員が高まる
- 実践的な「引く力」が身につく
- バーに対して身体を近づけることで、体幹のコントロール力が向上する
デメリット
- 一定の筋力がないと実施が難しい
- 初心者にはコントロールが難しい
つまり、ラットプルダウンは「バーが動く」、チンニングは「身体が動く」という基本的な違いがあります。
チンニングで背中に効かせるためのフォームと「脚の位置」
フォームを意識することで、チンニングを「ただの懸垂」から「背中に効く懸垂」へとレベルアップできます。
脚の位置は「後ろに引く」が正解
よくあるミスは、足を前に出してしまうフォームです。これだと体が丸まりやすく、広背筋への刺激が逃げてしまいます。理想的なのは、腹圧を高め、腰椎を固定し、股関節から足を引き、お尻の筋肉を収縮させ、膝も後ろに軽く曲げて、軽い反り身の状態を作ることです。これにより胸が自然と開き、広背筋をより効果的に使える引き方ができます。
グリップによって効く場所、効き方が変わる!
チンニングは手の向き(グリップ)を変えることで、効果を与える部位や難易度を調整できます。
1. オーバーグリップ(順手)
- 手の甲が自分に向く一般的な握り方
- 広背筋上部や大円筋などの関与が強い
- 背中の広背筋上部の「広がり」を作るのに適している
- 肩甲骨も動きやすい軌道のため、僧帽筋など広背筋以外の背筋も活性化する
2. アンダーグリップ(逆手)
- 手のひらが自分側を向く握り方
- 広背筋の下部まで刺激が入る
- 肩甲骨が動きにくいため、僧帽筋などの関与は少なく広背筋への刺激が強くなる
- 上腕二頭筋(力こぶ)にも強く効く
3. パラレルグリップ(中立)
- 手のひら同士が向き合う握り方
- オーバーグリップとアンダーグリップのメリットを組み合わせられる
- 広背筋と腕をバランスよく鍛えられる
- 初心者に特におすすめのグリップ
広背筋上部や大円筋、僧帽筋などを鍛えたい場合はオーバーグリップがオススメです。アンダーグリップは僧帽筋などの関与を減らし広背筋をメインに鍛えることができ、特に骨盤に近い広背筋下部まで収縮させることができます。ただし、上腕二頭筋の関与も強くなり、腕の方に負荷が流れやすくなる可能性があります。パラレルグリップは、これら二つの特徴を併せ持っており、広背筋をバランスよく鍛えながら、上腕二頭筋への負荷も適度に保て、比較的筋力も出しやすいのが特徴です。
結論として、まずはパラレルグリップでのチンニングがオススメです。グリップ幅は広めに握れば腕の関与が減り背中に効きやすくなりますが、腕の筋肉が関与しにくいため、筋力が少ない方は少し狭めに握ることで力を出しやすくなります。自分の筋力レベルに合わせてグリップ幅を調整してみましょう。
パラレルグリップチンニングミディアム(参考動画)
パラレルグリップチンニングナローグリップ(参考動画)
さらに上級者にオススメのスターナムチンニング
これはパラレルグリップもしくはアンダーグリップで握り、通常のチンニングよりも姿勢を反らせて行います。身体を持ち上げる際に大きく反り、上半身を床に対して平行にするイメージで行い、バーがみぞおち付近にくるように身体を持ち上げていきます。通常よりも身体から肘を離した状態で行うことで、肘を曲げる可動域よりも肩関節の可動域を大きくとれ、背中により効果的に刺激を与えることができます。
(スターナムチンニング参考動画)
チンニングで効果を最大化するためのポイントまとめ
- 反動を使わず、丁寧に引く
- 胸を張って、股関節、脚を後ろに引く
- 下ろす動作(ネガティブ)をゆっくり行う
- 回数よりも「背中の動きを意識してフォーム」を重視する
1回1回をしっかりコントロールし、「背中の筋肉で自分の体を持ち上げている」という意識を持つことが重要です。
まとめ
チンニングは、自重を使って行うシンプルなトレーニングながら、背中を大きく広げたい人にとって最強の種目です。ラットプルダウンと比べると難易度は高いですが、その分筋肉への刺激は強力で、全身の連動性も鍛えられます。
- 固定面の違いを理解し、目的に応じて使い分ける
- 脚の位置は「後ろ」が基本
- グリップは目的とレベルに応じて選ぶ
正しいフォームと意識を持って行えば、たとえ少ない回数でも効果は絶大です。ぜひあなたのトレーニングに取り入れて、理想の背中を手に入れてください!