スロートレーニングとは?「ゆっくり動かす=効く」は間違い?
スロートレーニングとは、筋トレの動作をゆっくりと(1回に8秒以上)行うトレーニング方法で、「効かせる筋トレ」として初心者や女性にも人気のある方法です。
ですが最近、「スロートレーニングは実は効果がない」「効かせる筋トレは筋肥大しない」といった声も増えています。
本当にスロートレーニングは筋トレとして意味があるのか?科学的根拠をもとに解説します。
スロートレーニングは筋力・筋肥大に向いていない?最新研究が示す事実
結論から言うと、スロートレーニング(1レップ8秒以上)では筋力や筋肉の成長(筋肥大)があまり期待できないという研究結果が複数存在します。
「ゆっくり動かすほど効く」と思いがちですが、それは**感覚的な“効いてる感じ”**であって、実際の筋肉の成長には直結しないのです。
通常テンポの方が筋力向上が大きい(ジョージ・ワシントン大学)
2001年に行われた研究では、
- 4秒ほどの通常の筋トレテンポ
- 8秒以上かけたスロートレーニング
を比較したところ、4秒で行ったグループの方が筋力が大きく向上しました。
(※George Washington University, 2001)
このことからも、「筋トレは遅ければ遅いほどいい」という考えは間違いである可能性が高いと言えます。
筋肥大にもスピードが重要(マクマスター大学)
筋肉を太くしたい(筋肥大)場合にも、スロートレーニングは効果が薄いとする研究があります。
アームカールを使った実験で、
- 1秒の速い動作のグループ
- 8〜9秒かけて行うスロートレーニングのグループ
を比較したところ、速く動かしたグループの方が筋肥大効果が高かったと報告されています。
(※McMaster University)
最も効果的な筋トレスピードとは?(ニューヨーク市立大学)
2015年に行われた大規模な研究では、「筋トレの動作スピードと筋肉の成長の関係」が調査されました。結果は以下の通。
- 0.5秒〜4秒以内:最も筋肥大効果が高い
- 4〜8秒:効果はあるがやや落ちる
- 8秒以上:有意な効果は認められない
(※City University of New York, 2015)
つまり、「効かせる筋トレ=ゆっくり動かす」は、ある一定の速度(8秒以上)を超えると、逆に筋トレ効果を下げてしまうということです。
なぜスロートレーニングは効果が薄いのか?
スロートレーニングが筋トレ効果を下げてしまう理由は次の通りです:
- 筋出力が低下しやすい:動作が遅すぎると力を出し切れない
- 速筋の動員が減る:筋肥大には速筋が重要なのに、あまり使われない
- パンプ感と成長を混同してしまう:「効いてる気がする」だけで終わってしまう
「効かせる筋トレ」を重視するあまり、筋トレの本質=出力と負荷を忘れてしまう人も多いです。
筋肥大・筋力アップにおすすめのトレーニングスピードとは?
スロートレーニングではなく、適切なスピードで筋トレを行うことで、効率よく筋肥大・筋力アップが狙えます。
● 初心者の場合(フォーム重視)
2秒で下ろし、1秒で上げる(2-1テンポ)
フォームが安定しやすく、筋トレ初心者にも安全です。
● 中級者〜上級者の場合(出力重視)
1秒で下ろし、1秒で上げる(1-1テンポ)
素早く動かすことで速筋が働き、筋肉が太くなりやすくなります。
※どちらも反動を使わず、コントロールした動作が前提です。
効果的なトレーニングのコツ:筋肉への意識と「出力」のバランスがカギ
スロートレーニングのような「ゆっくり動かして効かせる」方法が筋肥大には最適でないとお伝えしましたが、対象の筋肉への意識(マッスル・マインド・コネクション)を高めることは筋トレの質を上げる上で重要な要素です。
特に筋トレ初心者や、フォームにまだ自信がない方は、
- ややゆっくりめのテンポで動作を行い
- どこの筋肉に効いているかを体感しながら行う
といったステップを踏むことで、正しいフォームと筋肉の使い方が身につきやすくなります。
有効な挙上方法:対象筋を“先に緊張させてから”一気に出力する
さらに、中上級者向けにおすすめのテクニックとして、
「挙上前に対象筋を緊張させてから、出力重視で一気に動かす」
という方法があります。
これはプレテンション法(初期緊張)+爆発的挙上の組み合わせで、以下のメリットがあります:
- 対象筋の関与を最大化できる
- 無駄な部位(代償動作)の動員を抑えられる
- 神経系の動員効率が上がり、より筋肥大しやすい
ただし、この方法を行う際は反動を使いすぎないことがポイント。動作の中で対象筋からテンション(緊張)が抜けないように意識しながら、コントロールされた爆発力で動かしましょう。
【補足】スロートレーニングが有効な人もいる
ここまで「スロートレーニング=効果がない」という流れで解説してきましたが、以下のような方にはスロートレーニングが効果的なこともあります:
- 筋トレ初心者でフォーム習得が必要な人
- 高齢者や関節に不安のある人
- ケガやリハビリ中の方
スロートレーニングは負荷を抑えつつ、筋肉への意識を高めるのに適しているため、特定の層には有効です。
目的に応じて使い分けるのが理想的です。
まとめ|筋トレで本当に効果的なのは「ゆっくり動かす」ことではない
スロートレーニングは「効いてる感じ」はあるものの、実際の筋肥大や筋力アップ効果は薄いという研究結果が多数あります。
筋トレで効果を出すには、「効かせる感覚」よりも「しっかり動かして、力を出す」ことが重要。
「スロートレーニングは効果が得られにくい」とは言いましたが、“効く感覚”を育てる時間は無駄ではありません。
大切なのは、その感覚をもとに対象筋からのテンションを保ちつつ、しっかりと出力するトレーニングへと発展させることです。
つまり、筋トレで本当に効果を出すためには、
- 「ただゆっくりやる」でもなく
- 「ただ速く動かす」でもなく
- 正確に効かせつつ、力を出す
というバランス感覚こそが重要だと言えるでしょう。
テンポやスピードを見直すだけで、あなたの筋トレ効果は大きく変わるかもしれません。